読み物

日々の生活に”きれい”が増えるのも
お茶の作用のひとつ。

日々の生活に”きれい”が増えるのも
お茶の作用のひとつ。

源内礼さん
(フリーランスPR/ 『茶論』アドバイザー)

1975年生まれ。東洋英和女学院社会科学部卒業。セレクトショップ「BEAMS」で16年間キャリアを積み、2013年よりフリーランスのPRやプロジェクトプランナーとして主に飲食、ライフスタイル業態の新規マーケット開拓や事業出店、販促アドバイザリーを行う。ビームス在職時代から裏千家茶道を修道し、日常から茶道の教え、日本人的暮らし方を提唱。その経験を活かして、2018年2月より「茶論」のPRアドバイザーも兼任。

お茶(茶道)をはじめたきっかけを教えてください。

お茶を始めた一番最初は高校生の時です。何か特に強いインスピレーションがあったわけではなく、ただ友人に誘われてはじめたように思います。学校の茶道部に教えに来られていた表千家の先生のお宅にまで伺って個別に習っていました。部活ではなく先生のお宅をチョイスしたのは、当時私は学生寮に入っていて、門限が中1から高3まで一律5時50分と早く、少しでも長く外に出ていたかったからです(笑)。 寮は学校の目の前にあり部活だと直行で帰らないといけないし、先生たちも厳しく目を光らせていたので…。高1から高3まで通わせていただきました。その後、長崎から上京し大学・就職などもあって少しお休みしたのですが、30歳を機に流派を変えて裏千家に入門し、現在まで続けています。

お茶はあなたにとってどんな存在ですか?

前の問でお話した通り、はじめたきっかけはなんとなくなのですが、なぜか心の中ではずっとお茶は一生続けていこう、と学生の頃から思っていました。何故?と言われても上手く説明できないのですが、直感みたいな強いものでもなく自然な流れで自分の人生にすごくフィットしているように感じます。

お茶をすることで日常生活に変化があったら教えてください。

これまでに3名の先生から教えていただいていますが、皆さん頭から爪の先までしっかりとお茶人なので、考え方や振る舞いにとても影響を受けることがたくさんあります。皆さん芯が強く、美しく、優しい方ばかりです。人生の先輩として、同じ女性として、少しでも先生たちのようになれたらいいな、と思っています。最近は茶花が好きなので、お稽古を通してわずかですが知識も溜まってきて、そんな中で東京の街を歩くと、いたるところに茶花が植えてあるんです。個人的に大興奮!特に私が住んでいる松濤から青葉台辺りは素敵な邸宅もたくさんあり、お庭も綺麗にされているところばかりなので、その界隈を歩くとものすごく時間がかかります(笑)。今まで素通りしていた通りも見方を変えるだけでこんなにも楽しく思えるのはお茶のおかげ、と感謝しています。以前、「ほぼ日」さんで写真家の繰上和美さんと糸井重里さんが対談されていた中で、繰上さんが「きれいと思って見たときには、自分の気持もきれいになってるんですよ」と仰っていた言葉が印象的でした。お茶にはそういった作用がたくさんあるように思います。

源内さんは長年ファッションの世界に身を置かれていましたが、
ファッションと茶道に共通点を感じますか?

これは完全に私の私見ですが、ファッションと茶道にも通づる点はたくさんあると思います。利休は究極のクリエイターとよく言われるのですが、当時の世の中の通例やしきたりに対して自身の“美意識”を貫き、イノベーションを起こしてきた人です。まだ私も未勉強の部分はたくさんありますが、彼の功績がなければお茶はここまで広く、長きに渡って伝わらなかったでしょう。ファッションも然り。歴史に名を残すデザイナーたちはやっぱり、今までにない新しい価値観で既成概念をブレイクスルーする勇気と情熱を持っています。創意工夫を尽くして自分の美的感覚をどう表現するか。ココ・シャネルも千利休もフィールドは違えど、そうしたクリエイターとしての基質は同じなんだと思います。

お気に入りの茶道具を教えてください。

ひいおばあさまの茶碗
作家も時代も全く不明なのですが、曾祖母の形見で分けてもらったお茶碗をずっと使っています。曾祖母は明治の人でお茶もお能もする人だし、呼子(佐賀県)の名家の生まれだったので時代のいいものを持っていたらしく亡くなった途端、部屋がすっからかんになったんです(笑)。 そんな中で私がお茶をするから、と祖母が少しだけお茶碗を隠し持ってくれていてほとぼりが冷めてから渡してくれました。箱書きもないし名品とはかけ離れたお稽古用だと思いますが、私にとってはとても大切なものです。

あたためているお茶会のプランをそっとおしえてください。

お茶会が出来るようなお道具も持っていないので具体的なプランはないですが、茶箱が好きなので、それを携えて行く先々でお菓子やお花を揃え、出会う人に一服差し上げる。そんな感じがいいですね。

お茶をやられていない方へ、お茶の愉しさを一言お願いします。

普段飲むお茶も茶道のお茶も言ってしまえばただの”お茶”です。でも、その一杯をどれだけ美味しくしようと思うか、そこにどれだけの心を尽くせるか、が全てのお茶道を通しての醍醐味であり美徳だと思います。それは普段の暮らしやビジネスにも共通していて、気にするか気にしないかは自分次第。自分の意識の向き方ひとつで世の中の見方が変わり、たくさんの学びや豊かさを得ることができます。百聞は一見にしかず!是非、お茶の世界を体験してみください!

編集後記

お茶をすることで、いままで普通に通っていた道が愉しくなる。日々に”きれい”が増える。というのはお茶を通して磨かれた「美意識」ゆえの変化ですね。 お茶はけしてハードルが高いものではなく、生活に寄り添っているもの。ということが源内さんのお話から感じられました。

一覧に戻る