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野点とは。自然の中で自由にお茶を楽しむ究極のリフレッシュ体験

野点とは。自然の中で自由にお茶を楽しむ究極のリフレッシュ体験

野点とは。お茶の醍醐味をカジュアルに楽しむ

「野点(のだて)」をご存知ですか?屋外で抹茶を点てて楽しむことです。

近年、アウトドアブランドから専用の野点キットが登場するなど注目が高まっており、その言葉を耳にする機会も増えてきました。

ただ、茶道経験の無い多くの方にしてみると、「野点」の言葉は魅力的でも、実際の体験は依然として「自分とは関係のないもの」。

この記事では、そんな野点の簡単な楽しみ方や必要な道具、歴史まで、茶論の総合監修を務める茶人、木村宗慎氏の解説も交えて説明していきます。

冒頭でも触れたように、端的に言うと茶室ではなく屋外でお茶を飲むことは、全て野点です。茶室で行うものと比べるとなんとなくカジュアルで楽しそう。そんなイメージが湧いてきます。

「実際その通りです。近年、市民権を得た抹茶なる飲み物を、とにかく自分で点ててみて、アウトドアの大自然の中で楽しむ。エクストリーム茶会ですね。茶の湯の醍醐味をカジュアルに、格式にとらわれずに楽しんでいただくにはうってつけのアプローチではないかと思います。それは一人でもよいし、もちろん誰かとでも」と木村氏も話します。

カフェのメニューや、チョコレート・アイスクリームの代表的なフレーバーに定着して久しい抹茶。その抹茶を自然の中で味わう。そのこと自体に抵抗を覚える人は多くないはずです。

お湯を沸かし、自然の中でお茶を飲む格別な体験


では、具体的にどんな風に楽しめばよいのか。格式にとらわれないといっても、どこまで自由にやってよいものなのか。

「茶の湯において、野点の喜びとは“格”を外す楽しみです。大自然の中に出かけていくわけですから、その時点で格式張ったことは到底できない。

なので、本当にどんな形でもよいのでとにかくお湯を手に入れる。それは炭火でも焚き火でも、ガスバーナー、コッフェルのようなものでもいい。とにかく出かけたその場で手に入るお水でお湯を沸かしてお茶を飲むことです」

水の手に入れ方も、状況によってケースバイケース。山の中であれば清水を汲めばよいし、近所の公園であれば魔法瓶にお湯を入れていってももちろん問題ない。

「古格に則ろうと思えばいろいろな例はありますが、そんなものに囚われる必要はありません。格調高い野点もあれば、本当にカジュアルな野点の茶会もある。その中で、まず一番の基本は、自然の中へ出かけていき、普段の茶室や生活を離れる。そして、そこでしか手に入らないものを手に入れて、お茶を点てるということ。型どおりのお点前などしなくても良いのでです。

普段の暮らしでやっていることを自然の中で、出かけた先でやるというのはとても楽しいこと。自然の空気に触れながらいただく抹茶一杯は、茶室の中とは違った意味でご馳走になるでしょう」

道具や作法にとらわれない


茶道の作法である点前も不要とのこと。お道具に関しても、お抹茶を点てる茶筅(ちゃせん)は代用が利きにくいとされますが、それ以外の道具は原則なんでも大丈夫。ポイントは、コンパクトで持ち運びやすく、かつ丈夫なもの。

茶論が、アウトドア用品を製造するスノーピーク、日本の工芸をベースにものづくりをする中川政七商店と共につくった「野点セット」も、上記の要素を意識した商品。ステンレス製のマグの中に、茶筅や茶杓、抹茶入れがおさまる仕様です。

こうしたセットになったものをお求めいただいてもよいですし、コンパクトで丈夫という観点で自由にセレクトして楽しむのも一興です。

お抹茶やお菓子についても特に決まりごとはありません。

「出かけていった地域にお茶屋さんがあれば、そこでお茶を買ってみる。別に京都のお抹茶じゃなくてもいいんです。

お菓子も、旅先のお菓子を求める。もっと言えば、砂糖の入ったお菓子でなくて果物でもいい。ダッチオーブンで焼きリンゴでもつくって、それでお茶一服なんていうのも楽しいじゃないですか」

その土地ならでは、そのアウトドアならでは、ということを意識すると、その体験がさらに楽しく素敵なものになります。

茶の湯の草創期。室町時代に遡る野点の歴史

野点の歴史というと、戦国時代、豊臣秀吉の行軍途中に千利休がお茶をふるまった話が有名ですが、こうした、ある種自由にお茶を楽しむということは、もっと古い時代から行われていたそうです。

「古くは室町時代。茶の湯の草創期からそういう話はあります。“淋汗(りんかん)の茶の湯”といって、みんなでお風呂に入り、湯上りに一服、なんてものもありました。

より高度に物事を練り上げていくことは、知的好奇心をくすぐる、ひとの喜びです。でも、そうではなくて、もっと根源的というか、素朴に自然へ還るということも人間の欲求ではないかと思うのです」

自然と一体化する、という根源的な欲求。戦国時代の武将たちも、戦場という極限状態にありながら、自然を味わい、お茶を楽しむ時間を大切にしました。

リフレッシュには「非日常」が欠かせない


自然の中でお茶をいただくことで、我々現代人にも大きなリフレッシュ効果が期待できます。

「リフレッシュメントには、普段自分が行っていることから、体と心を遠くに置くということが重要です。

なんでもネットで手に入り、リモートワークで家から出る必要すらなくなっている。その中で、どうやって非日常の刺激を用意するのか。その意味では、あらたまってお茶碗を用意し、お湯を沸かし、茶筅をふってお茶を点てること自体が、たとえマンションの一室の自分の暮らしの中であっても非日常を演出してくれるはず。

そして、半年や一年に一回でもいい、野山や公園に出かけていって、そこで茶筅を振るなんていったら、そこで得られる非日常の刺激は、こたえられない楽しさに満ちるのではないでしょうか」

確かに、普段の暮らしで使うことのない茶筅を持ち、屋外で抹茶をいただくという場面には、日常の生活で巡り会うことはありえません。

キャンプ自体の楽しさに、お抹茶でプラスアルファの非日常感を追加する。やってみる価値は大いにありそうです。

「バーベキューが終わった後に、『コーヒー淹れるよ』といって豆を挽き始める友人を尻目に、こちらは『お茶を一服いかが?』といってお抹茶を点てる。キャンプの幅も広がるし、面白いですよね。

また、茶室の中では、できれば相手がいてほしいもの。屋外では、大自然がそのまま自分の相手になってくれる。我が身ひとつで自然と対峙する良さがあります」

一人でも、複数でも。野山でも、近所の公園でも。その場所ならではの水やお菓子を用意し、自分ならではの道具でカジュアルに、自由に楽しむ。そんな野点を通じて非日常の刺激を存分に味わい、リフレッシュする。一度体験すると病みつきになるかもしれません。またそこから茶道の世界にも興味を持っていただけると嬉しく思います。

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